シルクロード
井の頭通りと環七の交差点から環七を南に信号一つ
赤目になったらそれはスタートの合図だ
絶え間なく行き交う巨大魚の群れがせき止められている間に
出来るだけ早く出来るだけ遠くに漕ぎ出す必要がある
しかしその間この道は僕たちの自由だ
怠け癖が祟った真っ黒なベアリングもこの時ばかりは歓喜の雄たけびを上げ
カーでもコーでもシャーでもない音でトラックを鳴らす
不健康な木々、ススだらけの中央分離帯、豆粒ほどの小石
どれもこのエレガントととも取れる滑らかな黒い帯のしもべの様だ
そしてその帯の上、9センチを少しのブレも無く撫で回して行く
危ない!
振り返ると魚の群れがまさに目前に迫ってきている!
ヤバイヤバイヤバイ!例の強迫観念のように押し迫る魚たち
地の理を無視してヒレを振って貪欲にスピードを上げる
この道の所有権が決ったのはその直後だった。
赤目は民衆を従え魚群の進行を妨げた
白い檻に捕らえられた魚たち
どんどん小さくなる滑稽な魚影をのどを鳴らし笑う
ひと時の自由と開放感をこの道の上に転がしているのだ
よく転がるこの道の上に
さあ、何も失わない内に左折してしまおう
下北沢が待ってるぜ!
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